WAKU JEWELRY Blog

和久譲治のジュエリーブログ

 

WAKUコレクション(4)

1600's中期以後スペイン・ポルトガルで流行した二つのスタイル Cross(十字架)と B0w(リボン)そしてSemi esfericos setting(半球留)

 

(1)Cross Pendant  silver 水晶

 

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Semi esfericos setting(半球留)の「 esfericos」はカタルーニャ語です。イベリア半島では、スペイン東部のカタルーニャ州(特にピレネー山脈地方)で語られています。言語系統を見ていくと、フランス南部、イタリア北部に続いていく、ラテン系になります。その言語が示すように、イタリアでルネッサンスの頃流行した「Cuspide setting(尖塔留)」が、スペイン、ポルトガルの地で、バロック様式に華やかに発展したものと考えます。台座側面の美しい立体彫りが特徴です。1600's中期以後、18世紀初頭に現れています。

参考文献記事:西洋アンティークOcurus No10 石留の技法 和久譲治

 

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さらに驚くことに、裏面にもローズカットの水晶が「Pipe setting」されています。台座の穴を共有して、両サイドに石を引掛ける「二段彫り」を施し、裏表の石留を実現させています。この裏表の石留作品は1650~1720年に作られました。

 

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裏面

 

ルネッサンス以来、ジュエリーの表は「宝石+エナメル(七宝)」、裏は「彫+エナメル」でで美しく彩られてきた歴史があります。「宝石+彫・エナメル」で、1600's中期以後スペイン・ポルトガルで流行したB0w(リボン)スタイルのジュエリーを、次にご紹介します。私のコレクション中最古の作品で、宝石のカットから見て、マゼランが宰相であったルイ14世時代のものです。

WAKUコレクション(3)

 

1700's シルバー&ペーストジュエリーコレクション(2)

 

 

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1760~70年の頃、ポルトガルで、よく似たデザインと技法でトパーズのジュエリーが作られました。この作品は、当時フランスで流行していたペーストに金属箔を「Hammered  cloisonne setting」(参照)しています。購入したロンドンの老舗アンティーク店の主は、イギリスかベルギーで1760~70年の頃作られたと話していました。

この頃、マリーアントワネットが好み、流行したペーストジュエリーの色彩は、ピンクや鮮やかなブルーでした。パリでは金属部分を、出来るだけ少なく繊細に作ったことも考え合わせると、イギリスかベルギーの推察は正しいと思っています。

正装のご婦人に、着けて頂きたいさくひんです。

WAKUコレクション(2)

 

1700's シルバー&ペーストジュエリーコレクション(1)

 

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(1)1700年代 シルバー製ペーストジュエリー 4点

 

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(1)1700年代 シルバー製ペーストジュエリー(裏面)

 

1700年代のペースト(鉛ガラス)を使った、シューバックル(左上)と飾りボタンです。(後にブローチ加工されています)ルイ15世時代、ヴェルサィユ宮殿に集った貴族たちが、装っていたものと同じものです。製法は、基本的にコレクション(1)と同じですが、面白いヴァリエーションが見られますので、詳しく見ていきましょう。この変化の中に、ダイヤモンドのカットが進歩した時(石枠の裏張りがいらなくなった時、すなわちオープンセティングの始まり)現代的なパヴェセッチングに変化する兆しが見られます。(参照・長い文章です、マルボタンの写真を見つけてください)

 

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(2)左下・Giardinetto ボタン;和久ノート

 

和久ノート上段

17世紀末~18世紀、ヨーロッパ(特にイタリア、イギリス)で流行した「Giardinetto 」と呼ばれる様式のボタンです。多くは「花束」や「フラワーポット」のデザインリングが作られています。ただし、同じ様なデザインでも、作られた技法によって、年代の違いがあります。このボタンの製作技法は「和久コレクション(1)」(参照)

と同じであることは、和久ノートを見て頂ければ分ります。石枠表面のデザインを植物風に仕上げただけなのです。「Giardinetto 」とは、スペイン、ポルトガルで始まった製作技法のアレンジです。

 

和久ノート下段

「openwork」

一つ一つの石枠を作り、ロー付で組み合わせる方法から、写真(1)の上段と右下のように、石の密集したデザインでは、一枚の板から、デザイン全体を切り出す方法がとられるようになります。いわゆる「openwork」と呼ばれる、切り抜きの透かし細工です。そしてそこに一枚の板をロー付けしてcell(小部屋)を作っています。右下は厚めの底板をロー付けしたので、軽くするために、従来のように削り落としています。上段の二つは、最初から薄板を使っています。

 

「openwork・Giardinetto 」

宝石のcut技術が進歩すると、石の下をcell(小部屋)状態ににして、金属箔などを入れる必要もなくなります。18世紀の末期、イギリスなどで流行したのは、宝石の下が開いた「Giardinetto 」です。ですから裏面を見れば、作られた年代の一つの判断材料になります。

石留についての参考記事、記事中でこの作品写真をみつけてください。

私も「openwork・Giardinetto 」は好きなスタイルなので、「petite fiori 花シリーズ」でよく用いてきました。

 

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 「openwork・Giardinetto 」の小花を、槌目リングに合わせています。(小花の中はローズカットのダイヤモンドです)

「petite fiori 花シリーズ」・和久譲治

 

 

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