Hove'
Holly Wood と契約したFine-jeweler.
19世紀中頃、ナポレオン3世統治下のパリで設立された宝飾店です。1920'sアメリカに移り、コスチュームジュエリーを作ります。Holly Woodの映画会社と契約して作品を作ったことで有名です。
この作品は初期のもので、徹底したフランスアンティークジュエリーの技法作られています。驚くことに、和久コレクション(7)で紹介した19世紀初頭ナポレオン1世時代の技法です。色鮮やかな半貴石と細い撚線で構成され線状細工もナポレオン1世時代に流行したスタイルです。
ナポレオン3世の時代(在位1852年~1870年)にナポレオン1世時代(在位1804年~1815年)のスタイルと技術で宝飾品を作ったのですから、皇帝との結びつきが考えられます。アメリカ移住の理由もそのあたりにありそうです。ちなみに、和久コレクション(7)のモデルになった「シャルルマーニュのペンダント」はこの時代、ナポレオン3世妃 ウジェニー・ド・モンティジェが所有していました。
ナポレオン1世時代の技法を検証していきましょう。和久コレクション(7)と比べてみてください。

(1)
表から見れば日本彫金の覆輪止めのように見えますが、裏から見れば。いわゆる「pipe-setting」であることが解ります。和久コレクション(7)に図解していますように、板を丸めてロウ付けしてパイプを作り、石を引掛ける段差を洋彫り鏨で彫りこみます。

(2)
裏から見ればこれらの作業を、全て手作りしているのが解ります。今ではジュエリーでもやらないような、労力と技術の必要な作業です。パリでジュエリーを作っていた頃そのままの工程でつくっています。

(3)

(4)
石留は、さすがに18世紀の「cutdown-setting」(コレクション6の様に)はしていませんが、ペースト(ガラス石)に金属をたたき被せています。たたき被せる時に出来た余分なしわは「cutdown-setting」の飾り爪のように残してあるのも確認できます。硬い宝石なら容易い作業ですが、割れやすいガラス石に金属をたたき被せるのは、熟練した技術が必要です。ギザギザの爪止めに見える石枠は、一つ一つ糸鋸でカットしています。

(5)
下に見えるレール状の明り取りも、アクセサリーでは珍しいハイ・ジュエリーの技法です。
つまり18世紀半ばから、パリで作っていたジュエリーそのままに作られているのです。
良き時代のHolly Wood映画用であり、Holly Woodセレブリティの、当時流行していた「Cocktail Party」の為のコスチュームジュエリーです。
もう少しHove'の作品を続けます。