オーストリア=ハンガリージュエリー(オーストリア=ハンガリアン)
ネオルネサンススタイル
アンティークジュエリー好きの人はご存知の,ちょっと特別のジュエリーです。ハプスブルグ家の君主が統治するオーストリア帝国は、1867年からハンガリーを国家連合の形態で統治を始めます。ジュエリーやアクセサリーもオーストリア帝国の文化にオリエンタルなハンガリーの色彩が加わり独特のテイストを持った作品が作られました。現在ではアンティークマーケットでも見かけることは少なくなり、コレクターのアイテムになっています。
この作品は1866年のホールマークですので、正確にはオーストリア=ハンガリアンとは呼べないのかもしれません。しかし、重要なことが解ります。国家連合の前年にウイーンの工房で作られたこの作品はオーストリア=ハンガリアンの特徴である「ネオルネサンス」のデザインで作られています。つまり、オーストリア=ハンガリアンジュエリーはオーストリア帝国の流行をハンガリーに持ち込んだものなのかもしれません。そしてハンガリーのアクセサリーはもっとマジャール民族の民芸品的な色彩が強くなります。
この作品は色彩が少し控えめの「ネオルネサンス」のデザインです。そしてウイーンの工房の技術力が解る丁寧で高度の石留がみられます。
写真(4)のクラスプ(留め具)の裏側を見れば、スペイン、ポルトガルの彫留とは違う発展をした石留技術が分かります。完全なクローズドでもなく完全なオープンでもありません。小さな穴に石のキュレットが見えています。石を取り除いてみなければ、正確なことは言えませんが、スペイン、ポルトガルの彫留の様な、石のガードルを引っ掛けて石を正しく座らせる二段彫りがないかもしれません。石のキュレットを穴に差し込むことで、石をまっすぐに座らせています。スイスの時計業界で使われている彫留です。(参照)
この特徴はオーストリア=ハンガリアンジュエリーの真贋を見分けるときに役立ちそうです。

(1)ガーネット、パール、ローズクォーツ,エナメル、銀製

(2)
パールのリベット留めはルネサンスのジュエリーに見られます。エナメルは剝がれ落ちている箇所が多いです。完成時はもっと目立っていたはずです。

(3)細部にまでガーネットがスペイン、ポルトガルのスタイルで彫留されています。
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(4)裏面のエナメル

(5)刻印はViena(ウイーン)、1886年、SV800
ボックスキャッチ(留め具)も丁寧に作られています。
