1600's中期以後スペイン・ポルトガルで流行した二つのスタイル Cross(十字架)と B0w(リボン)そしてSemi esfericos setting(半球留)
(2) B0w(リボン)and Cross(十字架) silver 水晶
アンティークジュエリー探しは、本当に面白いことです。このジュエリーに出会ったのは、リスボンのショッピングモールに入っているアンティーク店でした。中年のマダムだけでやっているお店でした。本人が自分で買い付けに歩いている人で、面白い地方などのことも話してくれました。この小さなアンティークジュエリーのことは、比較的新しい17世紀風ブローチだと説明を受け、安く手に入れました。後でよく調べてびっくりしました。いくつもの発見があり、私のコレクション中、最古(1600’s後半初期)の物だと解りました。このアンティークジュエリーの秘密をひとつづつ説明します。
このジュエリーに用いられている水晶のカットは、これまで見たことがありませんでした。(1)の写真を見てください。二つのオーバルの石のカットは左右で違っています。右の石は、テーブルからガードルの間(上部・クラウン)を、上下の▽、△でカットしています。一方、左の水晶は▽、◇、△にカットされています。そして写真(2)、確認できるパビリオン(下部)は△x4になっています。色々変化に富むカットの基本的な構成要素は写真(3,4)に見られるものでした。同じ基本的な構成要素を持つ歴史的なカットは、写真(3,4)になります。そして、その両方がルイ4世の時代を指し示しています。これは詳しく見ていかなければいけません。
(1)側面の丸味は素朴ですがSemi esfericos setting(半球留)(参照)になっっています。
(2)ポイントカット(Point Cut)(上下四角錘)の上が取れてテーブルカット(Table Cut)が生まれ、テーブルに△カットがされ始めた初期に当たる。マザランカット(Mazarin Cut)などがある。マザランカット(Mazarin Cut)は側面に▽x1だが、これは▽x2に変化している。
(3)ムガルカット(Mughal Cut,インド)に由来するポートレートカット(Portrait Cut)
写真はルイ14世が手に入れ、1668年にカットさせた有名なホープ・ダイヤモンド
16世紀までは、ダイヤモンドの産出も研磨も、インドのムガル帝国(Mughal Empire)が独占していました。16世紀にヨーロッパでダイヤモンドの研磨が始まります。その試行錯誤の様子が、このペンダントに使用されている水晶のカットにみられるのです。
(4)マザランカット(Mazarin Cut)
ダイヤモンドの原石は六方晶系ですから、角砂糖のような形です。そのカットの歴史は写真(5)のように発展していきます。そして、四角形のテーブルカット(Table Cut)の側面に、さらにカットを加えることから、今日のブリリアントカット(Brilliant Cut)への道が開けていきました。写真(4)のマザランカット(Mazarin Cut)は、初期の一つの完成形です。このペンダントの四角石(写真2)は、マザランカット(Mazarin Cut)によく似ています。ちなみにMazarinとは、ルイ14世の教育係であった「Jules Mazarin 1602~1661」ことです。
(4)マザランカット(Mazarin Cut)
(5)
写真(1)楕円形石のカットは、非常に面白く、写真(6) (A)Portrait Cut になっています。マザランカット(Mazarin Cut)ではすでに、外側の△は縦に二分割されて、丸味に沿った多いファセット(facet、カット面)になっています。ヨーロッパにおけるダイヤモンド研磨の初期には、写真(3)のような、インドのムガルカット(Mughal Cut)を参考にしていたことが証明されます。Brilliant Cutのテーブル(上部の平らなファセット)などでは、四辺形の二分割で八角形なのですが、(A)の水晶は十角形にして、丸味に沿わせています。
ルイ14世がホープ・ダイヤモンドを手に入れて、加えたカットが、ムガルカット(Mughal Cut,インド)に由来するポートレートカット(Portrait Cut)であったことと、同時代性を感じます。
(6) (A)Portrait Cut (B)Prot-Brilliant Cut(Baroque-Brilliant Cut)和久ノート